今考えると本当に恐ろしいことをやっていました。
最初のうちは連戦連勝で、面白いように含み益が膨らみました。
そして、これは私に限った話ではありませんでした。
この当時のマーケットは右肩上がりでしたので、ズブの素人でも簡単に株で儲けられたのです。
それなのに、私はこれを自分の実力だと勘違いしたバカヤローでした。
調子に乗った私は、もっと手っ取り早く儲けてやろうと、禁断の信用取引にまで手を染めてしまったのです。
ほろ酔い状態は長くは続きません。
瞬く間に泥酔状態に陥り、さらには昏睡状態へと突入したのでした。
忘れもしない2006年の春。
新興株式市場がソロリソロリと値を下げ始めたのです。
すっかり天狗になっていた私は、一時的な調整だと高をくくっていました。
致命的な判断ミスです。
そこから、転げ落ちるように損失が拡大。
株式市場は2007年のサブプライム危機に端を発した大荒れの展開へと突入していったのです。
当時の私の目は完全に曇りきっていました。
知識とノウハウを駆使すれば相場に勝てると思い込んでいたのです。
その状態で、過去の市場データやアナリストのコメント、新聞やテレビの報道だけを頼りに、無謀な財テクに走ったのです。
フロントガラスが真っ黒に曇った車に乗って、バックミラーを頼りに過ぎ去った景色だけを見て走っているようなものでした。
事故を起こさないわけがありません。
こうして、安易な蓄財を決意してからわずか数年で、なけなしの財産と妻の持参金とを使い果たし、莫大な借金をかかえる身に転落してしまったのです。
親のために建てた家の借金返済にも行きづまり、親の年金を拝借して補てんするという本末転倒なありさまでした。
親父はあきれ果てながらも息子の行く末を案じ、失意のうちにこの世を去って行きました。